保管申請手続について第2回をご説明します。
前回(自筆証書遺言の保管制度の内容について)の記事についてはボタンをクリックください。
目次
4 保管申請手続について
保管申請は、
管轄権のある遺言書保管所の遺言保管官(法務局又は地方法務局の長が指定する法務事務官)に対して行います。
申請は、本人が自ら出向いて行う必要があり、郵送や代理人によることはできません。
なりすまし等の偽装防止のためです。
◆管轄 ①~③のいずれかとなります。
①遺言者の住所地管轄の遺言保管所
②遺言者の本籍地管轄の遺言保管所
③遺言者所有の不動産の所在地を管轄する遺言保管所
◆必要書類
・遺言書
・申請書
・添付書類:遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍(外国人にあっては国籍)を証明する書類等
(住民票の写し、運転免許証・マイナンバーカード等)
・手数料 遺言書1通につき3900円(収入印紙)
保管申請の手続を行うと、保管証が発行されます。
遺言書は法務局の施設内に保管され、遺言書の画像情報を遺言書保管ファイルに記録します。
(参照)法務局 自筆証書遺言の保管制度 申請書 https://www.moj.go.jp/MINJI/06.html
5 遺言書の保管後の手続
遺言書の保管後に行う手続についてご説明します。
遺言書が生存している間は、遺言者に限り、いつでも遺言書の閲覧・撤回ができます。
◆遺言書の閲覧制度
遺言者はいつでも遺言書の閲覧請求ができます。
原本は遺言書保管所のみ閲覧できるのに対し、画像情報による遺言書保管ファイルは全国すべての遺言保管所で閲覧することができます。
また、遺言者は閲覧請求のほか、遺言書を撤回することができます。
次に、遺言者が亡くなった後に、推定相続人を含む利害関係人ができる手続についてです。
◆遺言書情報証明書と遺言書保管事実証明書
相続開始(遺言者の死亡)後に限り、遺言書情報証明書と遺言書保管事実証明書の交付請求が可能となります。
まず遺言書保管事実証明書は、
遺言書の作成年月日、遺言書保管所の名称・保管番号、関係遺言書の保管の有無のみが記載され、誰でも交付請求することができます。
誰でもというのが違和感がありますが、遺言書が保管されているという程度しかわからないため、相続人等にも交付請求があった旨の通知はされません。影響がないという判断でしょうか。
次に、遺言書情報証明書は、
遺言書の内容に関する情報(画像情報、作成年月日、遺言者の氏名、生年月日、住所・本籍(国籍)、受遺者、指定遺言執行者、保管開始年月日、遺言書保管所の名称・保管番号、関係遺言書の保管の有無)が記載されています。こちらは重要な書類です。
遺言書情報証明書は、
関係相続人等に限り閲覧・交付請求でき、
閲覧・交付請求がされた場合には、
関係遺言書を保管している旨を相続人等(・受遺者、指定遺言執行者)に通知されます。
これらは、遺言者が希望する場合に指定した通知(遺言者の死亡後、指定者にのみ通知がされる)とは対比関係となっています。
6 まとめ
自筆証書遺言による保管制度は、
①法務局内の遺言書保管所において遺言書が保管される。
②家庭裁判所の検認が不要である。
③遺言者の死亡の事実は、遺言書保管所が戸籍担当との連携により把握することができる。
④遺言者が希望した場合には死亡後、指定通知者に遺言書保管の通知が届く、指定がない場合でも相続人等の閲覧・交付請求があった場合には相続人に通知が届く
といったところでしょうか。
自筆証書遺言は方式のチェックをしてもらえますし、保管してもらえるメリットがありますので、
これにより遺言書を作成しようという形が増える可能性はあります。
ただ、司法書士の立場として考えますと、
遺言書を作成すること自体はお勧めしますが、
前述のとおり、
自筆証書遺言は保管制度を利用したとしても遺言内容が有効かどうかは保証されませんので、
費用はかかっても公正証書遺言を勧めたいところではあり、
費用と確実性どちらを優先すべきか難しいところです。
以上、遺言書保管制度についてでした。