1 複数の人が亡くなった場合
今回は、亡くなった人が複数人がいる場合に生ずる、数次相続と代襲相続の違いについてご説明します。
最初に事例からいくと、例のごとくAが亡くなり、遺言書は残していません。遺産分割協議はまだ行われていません。
Aには妻B、子CとDがいますが、Cは死亡しています。Cには妻E、子Fがいます。
A以外にも「Cが」亡くなっている場合というのが重要なポイントです。
まずAの相続人を考えると、妻Bと子C(仮)、Dです。
説明の都合上、Cは「仮」とします。相続人についてはこちらを参照ください。
(民法:886条~895条も参考までに外部リンクを入れておきますのでご参照ください)
Cの相続人は妻Eと子Fです。
Aの推定の相関図は以下のようになります。

ここで重要なのが、Cは、いつ亡くなったのか?ということと、
CはAの相続人になるのか?です。
パターンとして、A→Cの順、C→Aの順、AとCが同時(または不明)が考えられます。
2 数次相続(CがAの死亡後に亡くなった場合)
まず、A→Cの順に死亡した場合です。
結論から言うと、Cは死亡してもAの相続人です。これは自然な形です。
つまり、Aの死亡時点ではCは相続人です。これが相続手続時点で、Cは死んでいるからAの相続人ではないとすると、相続人間の意思(いつ相続手続をするか)によって相続人が変わることになってしまうとおかしくなるわけです。
よって、Cは死亡してもAの相続人のままですが、Cは死亡しているので、BとDだけでは遺産分割協議ができません。Cを含めた相続人全員が遺産分割協議をしなければ無効になるからです。
ではどうするのかというと、この場合、Cの相続人としての地位は、Cの相続人であるEとFが引き継ぎます。
よって、Aの相続の遺産分割協議は、B、D、Cの相続人であるEとFの4人で行います。
仮に、Cが死亡する前に、BとC、Dで遺産分割が成立していれば、Aの相続についてEとFは相続人の地位を承継しません。
(Cの相続をEとFが行うことになります)
このAの相続人の一人Cを、EとFがさらに相続する、つまりA→Cの順に相続が起きていることを数次相続といいます。数次相続は時系列で考えればよいのでわかりやすいと思います。

3 代襲相続(CがAの死亡する前、または同時に亡くなった場合)
次にC→Aの順に死亡している場合と、CとAが同時に死亡している場合です。
これは数次相続にならず、代襲相続の話になります。
同時死亡とは、詳しくは割愛しますが、事故などで、どちらが先に亡くなったかが不明である場合を想定しています(同時死亡の推定)。
まず、同時死亡は、CはAの相続人とならず、AもCの相続人となりません。AとCがお互いの相続人となると、あまりに複雑すぎるからです。
ただ、同時死亡の場合も、CがAより前に亡くなっている場合と同じく代襲相続の問題となるので、以下、C→Aの順としてご説明します。
C→Aの順に死亡している場合、まず、「Cの」相続は、EとFが相続人であることは数次相続と同じです。
数次相続との違いは、「Aが亡くなった時点で」Cは死亡しているので、Cは「Aの」相続人ではない点です。
しかし、相続人ではない、以上。で終わってしまうと、Cに相続人がいる場合、これは著しく不公平なことになります。
これは、法定相続分で考えるとイメージしやすいです(遺産分割協議をしない、もしくは法定相続分に従って分割したケース)が、
もしCが生存していれば、Aの相続によるCの法定相続割合は1/4です。
(妻B1/2 子C・D1/2→人数で案分)コラム参照
Aの死亡後にCが死亡すると、Cの1/4は、EとFに1/8ずつです。
Aの財産が1600万円とすれば、Cに400万円、その後、そのC死亡により400万円は、Eに200万円、Fに200万円の割合で相続されます。あくまで数字上の計算ですが、これが2で説明した数次相続です。
ですが、CはAより先に死亡しているので、相続人ではないから終わり、となると、この400万円は、Cは取得できず、E、Fにも相続されることがなくなってしまうということです。これは不公平ですよね。
そのため、代襲相続の規定によりCの「代わり」に「Cの」直系卑属、つまり子(Aの孫)である「F」が「A」の相続人となります。
そうすると、「Aの」相続人は、B、D、Fとなります。
これは、A→Cの流れではなく、「Aの相続」です。そして、数次相続との違いは、血縁上、Aと他人であるCの妻Eは、Aの相続人ではないということです。

なお、代襲相続は、先に死亡以外にも、欠格事由や廃除などに該当する場合などにも適用がありますが、相続放棄した場合は、代襲相続はありません。
4 代襲相続は、どこまで認められる?
ちょっと長くなりますが、代襲相続は一定の制限があり、
①直系卑属、②直系尊属、③兄弟姉妹の順に以下にご説明します。
①直系卑属 何代まででも認められる。
子→孫→曾孫という場合もありえます。仮に「Aより先に」Aの孫Fも亡くなっており、Fには子Gがいた場合は、Aの相続人はGになります。
②直系尊属 代襲の規定自体がない。
Aに子がおらず、Aの両親X(死亡)とY(生存)とします。YはAの相続人ですが、XがAより先に死亡しているからといって、Xの両親はXの代わりの相続人にはなりません。代襲相続は下に下がっていくのみです。
XもYもともに死亡していて、祖父母が生存している場合は、祖父母は代襲相続ではなく、通常の相続人となります。
③兄弟姉妹 一代のみ認められます。
Aには妻はいるが、子はおらず、兄Mのみがいるとします。
兄Mには妻N、子Oがいます。Aより先にMが亡くなっていた場合は、Oが1/4を代わりに相続します(Nは相続人ではありません)。

ただし、兄弟姉妹は直系ではなく傍系ですので、傍系の代襲相続は制限され、再代襲までは認められません。
つまり、仮にMも、Mの子Oも亡くなっており、Oに子Pがいたとしても、代襲相続はOまでで、Pへは再代襲が認められないということです。
5 まとめ
代襲相続は少し複雑ですが、まとめますと、
つまり、複数人が亡くなっている場合、亡くなった順番が重要となります。
数次相続と代襲相続の違いを説明しましたが、数次相続については、Aの相続人、Cの相続人、という感じでイメージしやすいですが、
代襲相続に該当する場合は、数次相続と違い、子の配偶者などは相続人にならないということが生じます。相続人でない方が遺産分割協議をしても無効ですので、遺産分割協議の前に、誰が相続人なのかを正確に調査し、確定させる必要があります。