かめがわ司法書士事務所

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定款から読み取る(1)役員等の任期についてわかりやすく解説


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今回は、商業登記関係です。

会社の定款はとても重要なものですが、意外と定款って何ですか? と聞かれることも多い気がします
定款とは何か、どういうときに定款の確認が必要かをご説明したいと思います。

1 定款とは?

定款は会社の基本原則を定めたものであり、会社の憲法という言い方をします。

会社は、設立に際し、憲法である定款に基づいて、会社の今後の運営の仕方や方向を見直ししながら決定していくこととなります。

例えば、会社の拠点を「神戸市東灘区」、社名は「株式会社ケージー」(かめがわなので)、「楽器販売」を主たる業務としてやっていく、取締役はA1人、といった内容を定款で定めて、それに基づいて会社を設立し、以後会社を運営していきます。これを定款自治といいます。

会社設立時には、発起人が様々な内容を定めて定款を作成します(会社法26条)。
この定款を原始定款といい、会社の始まりとなる定款となります。

この原始定款は株式会社において(※)公証人の認証を受けることにより効力が生じ(会社法30条)、設立登記をすることによって会社が成立します。
(※持分会社は公証人の認証不要)

ちなみに発起人とは、株式会社を設立する人で、設立時の株式を引受を出資し、最初の定款を決め、設立までの手続きをする人です。
発起人は役員ではありませんが、その後、発起人が役員になることも多いです。

2 役員等の任期(会社法332条)

さて、第1回は、役員等の任期についてです。

まず役員とは、取締役、監査役、会計参与、等のことをいいます。
(会計監査人は役員に含まれないのでひとくくりでご説明する際は役員等としています)

役員(等)には任期があります。何年かごとに任期満了の時期が来て重任であっても役員変更登記がされています。

もし会社の登記事項証明書を確認して、何年も重任登記等がされていないとしたら、危ないです。

どんなに長くとも約10年を超えている場合は登記義務を怠っています。さらに、何の登記もされずに最後の登記から12年が経過すると、職権により休眠会社(みなし解散)になって、知らない間に解散になっている危険があります(※特例有限会社は任期の定めが不要ですので除きます)。

話を戻しますが、取締役の任期について会社法332条(※リンクは会社法331~)を見ます。

(会社法332条)
1 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

つまり、取締役の任期は原則 約2年ですが、
(わかりやすくするため「約2年」と表現します。)

・定款や株主総会決議により短縮OK
・非公開会社は、定款で約10年まで伸長OK

と規定されています。よって

取締役の任期は、

公開会社は、約2年以下(2年よりも短くすることはOK)
非公開会社は、約2年以下にすることも、約10年まで伸ばすこともOK

となります。

任期の規定は、実務上、定款に定めておくことが多いです。定めていない場合は原則通り(2年)ですが、実務上はそのまま2年と記載していることも多いです。

つまり、

任期が何年なのかは、原則通りなのか、伸長されているのか、はたまた短縮されているのかは定款をみないとわからないということです。

もう一つ補欠・増員の任期でも定款規定は関係します。これは3で説明します。

ちなみに監査役は約4年です(336条)。
非公開会社においては約10年まで伸長できます。
ただし、任期を短縮することはできません(補欠監査役を除く)。

3 役員の任期を登記記録から考えると

役員の任期は、まず登記事項証明書から、ある程度は予想はできます。

例えば、登記記録のパターン①です。
取締役Aが令和1年10月15日就任→令和3年10月12日重任

おそらく任期は約2年であり、令和5年の10月に定時株主総会が開催され、役員の任期満了だなと予想はできます(あくまで予想です)。

次に、登記記録のパターン②です。
取締役A 令和1年10月15日就任→令和3年10月12日重任
取締役B 令和2年1月15日就任→令和3年10月12日重任

Aに比べて、Bの任期は2年ありません。
AとBで任期の定めが違う可能性はありますが、

Bは補欠により就任した取締役の可能性が高いことがわかります。

理由は、役員の任期満了・改選時期は揃えないと大変なので、実務上は、補欠・増員の任期の規定も定款に定めていることが多いからです。

根拠としては、
会社法332条第1項の但し書きにより、補欠又は増員により選任された取締役の任期は、他の取締役の任期の残存期間とする旨の規定を定款に定めることができます。

ちなみに補欠とは、取締役の必要員数(例:定款で取締役を3名とする旨の定めがある)を欠いた場合に備えて、予め選定しておく場合をいいます。補欠・増員については次回以降にご説明します。

ただ、補欠・増員の任期短縮の規定が定款に定めがあるどうかは、
やはり定款を確認しないと正確なところはわかりません。この会社が非公開会社であれば、取締役A自身も補欠により任期が短縮されているかもしれません。

定款を確認すれば任期が何年なのか、補欠や増員の短縮の規定があるのかがわかります。

4 定款を確認せずに役員変更登記をすること

前述のとおり登記事項証明書からある程度は想像できるため、定款を確認せずに任期満了時期だと考えて、株主総会で「任期が満了するため、改選の必要が生じ…」として役員変更登記をしてしまった場合でも、添付書類から間違いが読み取れない場合は、そのまま登記されてしまう可能性が高いです。

そうすると後々つじつまが合わなくなるリスクがあります。

例えば、

任期満了による役員変更の登記では添付書類として、株主総会議事録に任期満了となる旨の記載がない場合、定款を添付する必要があります。定款で任期満了時期かどうかを登記官が確認するわけです。

そうすると、定款を添付する場合は登記懈怠が判明しますし、
株主総会議事録に任期満了となる旨の記載をした場合は、定款の定めと異なり、本来はとうに任期満了しているので議事録の内容はおかしくなります。

そもそも任期満了している役員は、員数の定めにより権利義務役員となっている場合はありますが、任期が満了すれば役員ではないので、そのまま役員として業務を行うことは社会的信用という意味でも危険です。また、権利義務役員であっても選任懈怠の問題はあります。

とはいえ、登記義務を怠っていた場合でも申請は必要ですので、気付いた時点で速やかに登記申請を行わなければなりません。

過料は避けられない可能性はありますが、放置している期間が長いほど、過料が高くなるリスクがあります。

会社法976条により100万円以下の過料と規定がありますが、

役員変更の登記懈怠では数万円~10万円程度のようです。

役員の変更は、論点としては難しくないかもしれませんが、定款を確認して正しく適切な時期に登記をしなければ大変です。会社の役員の任期が何年であるのかご存じない場合は、定款を確認したうえ、速やかに対処するようお勧めいたします。


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