かめがわ司法書士事務所

神戸市東灘区 相続・遺言・不動産登記・商業登記・後見

TEL078-600-9952



相続人について


今回は、考えてみると意外と難しい、相続人についてです。

1 相続人とは


まず相続人とは、亡くなった人(被相続人)の財産の一切の権利義務、つまりプラスの財産もマイナスの財産も承継する人です(896)。

亡くなった人を亡Aとすると、

亡Aの生前の預貯金や、土地や建物、株式、車など、プラスの財産、
亡Aの債務、生前の借入金や、支払義務のなる経費など、マイナスの財産

を相続人は承継します。

例外として身分行為に関するもの、一身専属権といいますが、年金受給権や扶養請求権などは承継されませんので、Aが亡くなった時点でAの年金受給権は終了します(遺族年金等は除きます)。

Aが亡くなった場合は、年金手続をしなければなりません。そのまま受給して発覚すると返還が必要ですし、下手をすると罰則になるかもしれません。

2 相続人は誰?

次に相続人は誰がなるのでしょうか。

配偶者は常に相続人となり(民法890)、配偶者以外は、次の相続順位で相続人となります。

① 配偶者〈1/2〉・子(・代襲相続人)〈1/2〉(民887)
② 配偶者〈2/3〉・父母(いない場合、祖父母)〈1/3〉(民889①)  
③ 配偶者〈3/4〉・兄弟姉妹(・代襲相続人)〈1/4〉(民889②)

〈 〉は法定相続割合です。

相続順位とは、第1順位の相続人が死亡、相続放棄などにより、相続人がいない場合に、第2順位が相続人となり、第2順位がいない場合は、第3順位が相続人となることをいいます。
※被相続人がいつ亡くなったかによって影響が出る場合があります。下記3でご説明します。

イメージ図にするとこんな感じです。

配偶者が赤、子が黄、
父母が緑、兄弟姉妹が青

です。

複数人数いる場合は、人数で按分となります。 
例えば、配偶者と父母が相続人の場合、法定相続割合は、配偶者〈4/6〉・父〈1/4〉・母〈1/4〉 となります。

仮に、先に述べたように相続人が相続放棄をした場合などには、相続人や法定相続割合に変動がありますので注意が必要です。
(例えば、法定相続人が配偶者・子で、子が相続放棄した場合、相続人は配偶者と父母になります)

ちなみに普通養子縁組の場合は、実父母とも養親とも相続関係になりますので、実父母の相続人でもあり、養親の相続人でもあります。

反対に養子が死亡した場合には、実父母も養親も相続人になります(特別養子縁組は除きます)。


それから代襲相続人とはですが、
亡Aの子CがAより先に亡くなっている場合、Cに子Eがいる場合には、Cに代わってEが相続人となる場合をいいます。
Aの後にCが亡くなった場合は、代襲相続ではなく、Cが相続人となります(代襲相続と数次相続の違い)。

代襲相続について、養子縁組の論点があります。
先ほど説明したとおり、養子縁組による養子は、血縁上の子と同じく、互いに法定相続人の関係となります。

ただし養子の子がどうなるかです。

養子縁組に出生していた場合、養親との親族関係はありません。よって養親が死亡した場合、養親より前に養子が死亡している場合は、養子の子には代襲相続はありません

つまりAがXを養子にした場合、養子にした時点でXの子Yが先に出生していた場合は、AとYは何のつながりがないわけです。親族でありません。

反対に、養子縁組後に出生した養子の子は、養親と親族関係がありますので、代襲相続権があります

うまくない説明になりますが、養子Xの子Yの立場で想像すると、

縁組前にYが出生していた場合、養子縁組したのは養親Aと養子Xであり、養子縁組によって急におじいちゃんと孫の関係にはならないわけです。

反対に養子縁組後に生まれたのであれば、おじいちゃんと孫の関係と考える方が自然な感じがします。

そんな単純な話ではありませんが、相続において養子縁組前に生まれた子か縁組後に生まれた子かは、代襲相続において影響しますので注意が必要です。

養子は論点が多いですね。また別でまとめたいと思います。

3 注意点

相続人については、注意点があります。

民法は相続人と法定相続割合について定めがありますが、

旧民法(明治の時代から昭和22年5月2日まで)以後、現在に至るまで何度か改正されています。

改正により何が違っているというと、まず法定相続割合が、現在とは違います(例えば、配偶者1/3・子2/3、兄弟姉妹の再代襲がありなど)。

有名なのは違憲判決により平成13年7月1日以降の相続について非嫡出子の相続分は嫡出子と同等であるとされた民法改正です。
(平成13年6月30日以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1)

さらに、とりわけ重要なのは旧民法の時代にあった相続です。

相続人が現在の民法と違います。
旧民法では「戸主(こしゅ)」という家族の家長がいて、戸主が死亡したり隠居したりすると、家督相続となって新たな戸主が家長になりました。

戸主が死亡した場合の相続は、家督相続した新たな戸主だけが相続人となり、
戸主以外の人が死亡した場合は、遺産分割でした。

何が言いたいかというと、2でご説明した法定相続人と相続割合は現在の民法上の規定であり、
それぞれの民法の改正時期に当てはめて相続を考えないといけないのです。

旧民法時代の相続は、相続手続きを令和になってからする場合でも、相続人については旧民法に遡らなければなりません。

例えば、不動産の登記名義人が祖父Gのままで、祖父Gは昭和20年に死亡していたとします。
その場合、祖父Gが戸主であった場合、祖父Gの子Aが家督相続していた場合、相続人はGの子A一人です。

反対に、もし祖父の弟J(Aから見て叔父)が家督相続していた場合は、Aは相続人ではないということになります。

(祖父Gが戸主でなかった場合は、遺産分割となり、直系卑属→配偶者→戸主の順番で相続人となります。)

そうすると、祖父名義のままの不動産を相続したいんですが…と孫Cが考えても、
戸籍を見ると、Cはそもそも相続人じゃなかった…ということもあるかもしれません。

前に相続登記を早くした方がよい理由のコラムで相続人が変わっていく、増えていくということを書きましたが、

いつ亡くなったかによって、そもそも相続人であるのかどうかを考えないといけないということでもありますね。
実務では被相続人の出生まで辿るので、戸主制度時代の戸籍は珍しくありませんが、

まず誰の相続登記なのか?根本的なことですが、思ったよりも難しい論点かもしれません。

もう少し書きたいことがあるので続きはパート2でご説明します。


神戸市東灘区 司法書士事務所/相続・遺言・不動産登記・商業登記

Copyright (C) X-T9 All Rights Reserved.

PAGE TOP