かめがわ司法書士事務所

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定款から読み取る(2)役員等の員数


役員関係の続きです。前回は役員等の任期についてでしたが、今回は、役員等の員数の定めです。

1 役員等の員数とは

役員等の員数とは、そのままの意味で定員数です。

一般社員などと違って、役員等においては一定のルールが決められており、それに従わなければなりません。

一定のルールとは、会社法で定められている場合と任意で定款に定めた場合です。

まず会社法の定めをいくつか挙げてみますと、

例えば、株式会社は取締役を1人以上必ず置かなければならないので、取締役がいない株式会社は存在しません。

取締役会を置く場合(公開会社は設置義務あり)、取締役を3人以上必ず置かなければならないですし、
取締役会を置くと、委員会設置会社※を除き、監査役を1名以上置く(非公開会社の場合、監査役の代わりに会計参与を1名以上置くことでも可、ただし一定の場合代用は不可)必要があります。

他には大会社になると、会計監査人を置かなければならないし、会計監査人を置くと監査役等を置かなければなりません。

※監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社

なお、役員「等」と記載しているのは、会計監査人がいるためです。会計監査人は会社法で定められた機関の一つで登記事項ですが、役員ではないため、会計監査人を含めてご説明する際には語弊がないように記載しています。

次に、会社法の規定に抵触しない範囲で、任意に定款で定めた場合です。

例えば、取締役会を置く会社であれば、取締役は最低3人必要ですが、

「3人置く」と定める、「3人以上置く」と定める、「4人置く」といった形で定めることができます。

定め方によって意味が変わってくることがあります。

2 任意で員数を定めた場合にどうなるか

任意で定めた場合は、その定めに従わなければなりません。

先ほどの最後の例ですが、

取締役を「3人置く」とあれば、取締役は3人必要ですし、3人を超えてなれません。
A・B・C3人が取締役であればDは誰かが退任しなければ取締役にはなれません。
この場合、補欠として選任しておくか、定款を変更して員数を増やすかの方法を取らなければDの選任は不可です。

「3人以上置く」であれば、Dも4人目の取締役になれます。

ちなみに員数の定めとは少し違いますが、監査役を置く「ことができる」という記載はできません。置くのか置かないのか、商業登記は取引の安全のために登記義務があります。監査役を置く=登記事項ですので明確でなければなりません。

重要なのは、定款で定めた場合はそれに拘束される(公序良俗違反は除く)ので、会社の運営方針に沿っていないのであれば、定款を変更して修正していく必要があるということです。

3 登記記録から員数を読み取ることは

今回も登記記録から考えてみます。

登記記録を見た場合に、役員等が登記されている場合、会社法の規定である最低必要人数はわかりますが、
員数は定款を確認しなければわかりません。

また、役員の任期と同じ論点ですが、員数は登記事項ではありませんので、
仮に定款の定めに違反する員数で役員等を選任していたとしても登記申請に定款を添付しない場合は、そのまま登記されてしまう可能性はあります。

例えば、取締役を2名置くとある場合に、取締役がA1名しかいない場合は、もう1名の選任を怠っていることになります(選任懈怠で過料の対象になる)。

反対に取締役を2名置くとある場合に、取締役がABC3名を株主総会で選任した場合、決議取消の訴えの対象になるおそれがあります。その場合、ABC3名とも取締役でなかったことになるかもしれません。

4 代表取締役の選定と員数の定め

もう一つ、重要な定めとして、代表取締役の選定に員数の定めが関係する場合があります。

まず、「代表取締役を2名置く」とあれば、2名置く必要があることは先にご説明したとおりです。

代表取締役の選定方法は別でご説明しますが、定めた場合はその定めに従って選定する必要があります。

わかりやすい例は、

第〇条 代表取締役
第1項 取締役が2名以上ある場合は、取締役の互選により代表取締役を選定する
第2項 取締役が1名のときは、当該取締役を代表取締役とする

という定めがある場合です。

この場合は、取締役がA・Bいる場合は、A・Bの互選で代表取締役をAに選定した、という流れになります。
取締役がAのみであれば、そのままAが代表取締役になります。

もう少しわかりやすくするために、たぶん普通はないと思いますが、

第〇条 取締役「取締役を2名以上置く
第〇条 代表取締役「取締役が2名以上いる場合は取締役の互選により代表取締役を選定する」
となっていた場合、これはうっかり取締役の員数の定めを見落としたのかなと思われます。

ただ、もし代表取締役である取締役Aが死亡した場合はどうなるのかが考えられます。
これは後で考えますが、
まずは「取締役を1名以上置く」という定めにするなどして整合性をとる方がよいですけど。

また、似たような論点で

①「取締役を2名以内とし、取締役の互選で代表取締役を選定する」と定めた場合、
代表取締役である取締役Aが死亡した場合は、取締役Bが代表取締役となります。

これは2名「以内」という記載から取締役が1名の場合は、その者が代表取締役になると解されるからです(登記研究646号)。

(定款は取締役の定めと、代表取締役の定めを別の条文にしているので、「取締役を2名以内とする」「取締役の互選で代表取締役を選定する」とそれぞれ定めた場合と同じだと思います。)

②「取締役を2名置き、取締役の互選で代表取締役を選定する」と定めた場合は、
取締役が2名必須で、その2名の互選により代表取締役を選定することになるので、
取締役が1名になってもその者は代表取締役にはなれません。

これは、先に書いた「取締役を2名以上置く」「2名以上あるときは取締役の互選で代表取締役を選定する」で代表取締役である取締役Aが死亡して取締役B1人になった場合はどうなるのか?という場合と似ています。

「取締役2名以上置く」の定めがなければ、Bは代表取締役になりますが、この定めが削除し忘れなどで、残ったままだったら、「取締役を2名以上置き、2名以上あるときは取締役の互選で代表取締役を選定する」と同じになるので、Bは改めて選定される場合は別として、自動で代表取締役にはなれませんね。

長々と書きましたが、員数の記載の仕方で代表取締役がどうなるか結論が変わってきます。

定款を確認するということは、員数の定めが定款の他の定めに影響している場合がありますので、
員数の定めだけでなく、それに影響する定めが存在していないかを注意して確認することが必要となります。

以上、役員等の員数の定めについてでした。


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