かめがわ司法書士事務所

神戸市東灘区 相続・遺言・不動産登記・商業登記・後見

TEL078-600-9952



相続人について(2)


相続人について前回で書き切れなかったので、続きです。

1 相続人の調査

法定相続人は、配偶者とともに相続順位によって決まりますが、

相続手続では、公的に相続人を証明しなければなりません。

相続人を調べるには、
被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄抄本の収集が必要となります。
(特定承継遺言等の場合は少し異なります)

戸籍を出生まで遡るのは、一つの戸籍には、すべての相続人が記載されているわけではないからです。

なぜかというと、現在の戸籍は婚姻や離婚、養子縁組等により除籍します。
また、戸籍の改製、管外転籍等により、戸籍は変わりますので、婚姻等により除籍となった場合、その戸籍には除籍の記載がありますが、以降に作成された被相続人の戸籍には記載されません。

よって、すべての戸籍を確認しなければ、相続人が誰なのか、何人いるのかわからないわけです。

2 相続人は誰?


戸籍を出生まで遡ると、配偶者や子でさえ知らなかった、前婚や前婚の子がいる可能性があったりします。

sozokunin

Aが亡くなり、Aの相続人として、
妻B、子C・Dがいます。

B、C、Dは、自身が相続人であると認識していました。

Aの戸籍を収集してみると、Aは、Bとの婚姻の前に、別の人と婚姻していたことがあり、子Eがいることがわかりました。

相関図にしてみると、このような形です。赤の人が前妻です。前婚は点線で表わしています。

この場合、法定相続人は、B、C、D、Eです。配偶者はBですので、前妻は相続人ではありません。
法定相続分は、B(3/6)、C(1/6)、D(1/6)、E(1/6)です(平成13年7月1日以降の相続とします)。

相続で難しいところのひとつとして、B、C、DとEの関係です。Aの生前は関わることがなかったとしても、Aの相続人として、遺産分割を行う際には、Eも協議に参加しなければなりません。この辺りは、遺産分割のコラムを書いたときにご説明します。

3 相続放棄がある場合

次に、相続放棄があった場合です。

相続人が妻B、子C・Dの場合に、

①妻Bが相続放棄した場合、相続人は子C・Dです。

相続順位第1位のまま、配偶者が相続人でなくなる形です。

相続順位①配偶者・ 子の形です。

この場合、子CDと第2順位のAの父母が相続人とはなりません。

これによりCDの各相続分が増えます。
B2/4・C1/4・D1/4
→C1/2・D1/2

②子C・Dが相続放棄した場合です。これは要注意です。

相続順位は次順位に移行します。

相続人はBとUです。

これは、第2順位の配偶者Bと父F母Mに移行しますが、FもMも(さらには、Aの祖父母も)Aよりも先に死亡しているため、第3順位に移行し、
Aの兄であるUが相続人となります。

③配偶者・兄弟姉妹のぱたーんです。

これは、意図したものであればよいのですが、
子C・Dは、BにAのすべての相続財産を取得する意図で相続放棄した場合は、間違った判断となってしまいます。
もし、UやUに子もいない場合は、Bのみが相続人となりえますが、そうでない場合は、相続放棄ではなくB・C・Dが遺産分割によりBが取得するとしなければなりません。

4 先例による相続人の二重資格の判断

さらに応用的に、難しい論点があります。

二重資格の問題です。

例えば、被相続人Aの孫S(Cの子)を養子にした場合です。この場合に、CがAより先に死亡していた場合はどうなるのでしょうか。

Aの孫Sは、子Cの代襲相続人の地位と、養子Sとしての相続人の地位が並立した状態になります。

この場合に、二重資格を認めるというのが先例です。

そうすると、
相続分がB(3/6)D(1/6)S(2/6 Cの1/6合算)となります。

昭和26年9月18日民事甲第1881号民事局長電子回答

被相続人甲に子A・Bがいて、Aの子にCがいる場合に、甲がCを養子にした場合に、Aが甲より先に死亡し、その後甲が亡くなった場合、甲の相続人は、子Bと、子Aの代襲相続人C、子Cとなるが、この場合、Cはいずれも相続資格を有する(二重資格)。

二重資格を否定する先例もあります。

昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答

甲には実子A・Bがいて、Cが甲の養子となり、またAとCが婚姻している場合に、Aが亡くなったとき、Aの両親(つまり、甲と甲の妻乙)がすでに亡くなっている場合、Aの相続人は、配偶者と兄弟姉妹となるが、Cは配偶者としての相続資格は取得するが、兄弟姉妹としての相続資格は取得しない(二重資格の否定。兄弟姉妹としての相続分も認めてしまうと兄弟姉妹の相続分がさらに少なくなるなどのバランスを考慮したと考えられる)。

昭和32年1月10日民事甲第61号民事局長回答

兄弟姉妹のA,B、CのうちAとCが養子縁組した場合に、その後Aが亡くなった場合、CはAの子として相続人となるが、Cが相続放棄をした場合、Cは兄弟姉妹の相続人の地位を取得しない。
(第1順位である養子が優先する。また、一度相続放棄しているので、第3順位で相続の権利を取得させる意味がないという判断と考えられる)

5 まとめ

こうやってまとめてみると、相続人調査は簡単なようで難しいです。
特に相続手続を長く放置してしまったなどの事情により、
被相続人の相続人も亡くなっている場合は、その相続人は誰になるのか、
または被相続人より先に子が亡くなっている場合は代襲相続人は誰なのか、
その代襲相続人も亡くなった場合は…、相続放棄した場合は…、
さまざまなことが生じているかもしれません。
そうすると、専門家でなければ(専門家であったとしても)困難だと思われます。

長くなりましたが、相続手続は、最初の段階として、遺言書の確認、相続財産の調査と並行して相続人調査が必要となります。

少しでも早く相続手続を行うことができるように、参考になれば幸いです。


神戸市東灘区 司法書士事務所/相続・遺言・不動産登記・商業登記

Copyright (C) X-T9 All Rights Reserved.

PAGE TOP