かめがわ司法書士事務所

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相続放棄と相続分の放棄

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今回は、名前が似ているけど、意味が違う相続放棄と相続分の放棄についてご説明します。

1 相続放棄とは

相続放棄の言葉自体は知られているように思いますが、相続放棄の手続についてはよく知らないという人も意外と多いのではないかなと思います。

相続放棄は、簡単に言うと、初めから相続人でなかったことにすることです。

この「初めから」というのが重要です。

事例でご説明します。

例えばAが亡くなったとします。
Aには妻B、子Cがいます。また、Aの両親はすでに亡くなっていますが、兄Dがいます。

Aの(推定)相続人は、この時点では妻Bと子Cです。(相続人について参照)

前回の相続人のコラムで触れましたが、この場合にもし子Cが相続放棄をすると、
Cは初めからAの相続人ではなかったことになるため、相続人はBとDになります。
時系列的には、相続開始の時期はBと、Dでは異なってきます。

これが、初めから相続人でなかったことになるということです。

また、初めから相続人でないということは、Aの相続財産のプラスもマイナスも、関係ないので承継しないということです。

よって、Aに借金があったとしてもCには法律上関係ありませんので負担する義務はないですし、反対にAにいくら財産があっても関係なくなるため取得できません。
また、前述の通り、妻Bに全財産を取得させる意思で子Cが相続放棄をすると、BとA兄Dが相続人となるため、間違った判断となってしまいます。

2 相続放棄するには

相続人でなくなるということは大きなことです。よって相続放棄には手続が必要です。
これが重要な点2つ目です。

相続放棄をするには、
家庭裁判所に相続放棄する旨を申述し、受理してもらう必要があります。
これにより公的に子Cは相続放棄が成立したことが証明されるわけです。

これにはCの利益保護もありますが、利害関係人の利益保護もあります。

亡くなったAに借金があった場合、債権者としては、(推定)相続人であるBとCに債務は承継されますから、
BとCに返済を請求することができますが、Cが相続放棄の申述が受理されて初めて、自分は関係ないと主張できるわけです。

後で触れますが、ここが相続分の放棄との違いで、
相続放棄は絶対的な効力(第三者にも主張できる)を持っていますので、手続には一定の条件があります。

①自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内に申述が必要(民法915)

②相続財産を処分したときは相続放棄できない(民法921 保存行為は除く)

の2つです。

②の相続財産を処分したときというのは、例えば亡Aの預貯金を口座の解約手続をして受領した場合などです。これは当然ですよね。

次に、①の自己のために相続があったことについてですが、
亡Aが亡くなったことを知り、自身が相続人であることを知ったときのことをいいます。

Cが相続放棄して、Dが相続人になった場合などは、少なくともCが相続放棄をした(申述が受理された)以降の日となります。

相続放棄の場合は、絶対効であるからだと思いますが、相続財産の取得を認識したときという規定になっていません。相続登記義務化の場合は、自己が相続人であることを知り、所有権を取得したことを認識した日ですので、
微妙に起算点が相続の手続内容によって異なるので注意が必要です。)

ただし、3か月を経過していた場合でも、相続財産が全くないと信じ、そのことに正当な理由があると家庭裁判所が認めた場合は、相続放棄ができます。ただ、絶対放棄できるわけではないので、3か月以内に手続を行うことが望ましいです。

また、相続放棄後は、相続財産が後から発覚したとしても、もはや相続人ではありませんし、相続放棄をやめたいということはできませんのでご注意ください。

3 相続分の放棄とは

次に、相続分の放棄です。相続「分の」とつくだけで似ているけど実際は違います。

相続分の放棄とは、相続部分を相続した上で、自身の相続部分を放棄する意思表示をすることです。

相続放棄は、初めから相続人でなかったことになるのに対して、相続分の放棄は、一旦は相続人として相続しています。その後、相続部分は他の相続人に帰属することとなります。

似た論点として、相続分の譲渡というものがありますが、こちらとの比較はまた別の機会にご説明いたします。

重要な点としては、相続人として承継し、相続を放棄しますので、相続人の地位は失わないません。
そのため、第三者との関係で相続債務は残ることとなります(あくまで相続人内部の取り決め)。

これについては、民法改正で明示されておりいます。
わかりにくいかもしれませんが、

被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、相続分の指定がされた場合(この場合、相続分の放棄も該当します)であっても各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分(法定相続分のことです)に応じてその権利を行使することができる。
とあります(民法902の2)

例外として、但し書きで、
ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

とありますので、債権者がそれを承諾した場合は、内部の取り決めが、外部間にも適用されますが、通常、債務者の人数が減ることは、債権者にとって債権回収が不利になると考えられますので基本的には難しいでしょう。

話を戻しまして、相続分の放棄をするには、

相続放棄のように家庭裁判所に申述しなければならないということはないため(調停を除く)、
方法としては、
・相続分放棄証明書(+印鑑証明書)を他の相続人に提出し、遺産分割協議に参加しない
・遺産分割協議書に参加した上で、自分の相続分はなしとする

などが考えられます。

4 相続放棄と相続分の放棄の違い

まとめです。

相続放棄は、相続人ではなくなりますが、
相続分の放棄は、相続人のままです。

相続放棄は、相続財産(・債務)を一切承継しませんが、
相続分の放棄は、相続財産は放棄しますが、相続債務は放棄されません(承継されます)。

相続放棄は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりませんが、
相続分の放棄は、期限がなく、相続分放棄証明書(+印鑑証明書)を他の相続人に提出して遺産分割協議に参加しない、または遺産分割協議に参加して相続財産を承継しないなどの方法が取れます(調停の場合は放棄の届出書)。

実務的には、どのような意図で相続財産を承継しないのか、相続開始がいつなのかによって変わってきます。自身が関わりたくない、万に一つでも債務を承継したくないという意図なのか、相続人の一人に全財産を相続してもらいたいという意図なのかで、

相続放棄なのか、相続分の放棄なのか、また相続分の放棄の場合、相続分放棄証明書の形をとるのか、遺産分割協議によって承継しない形をとるのかで手続きが変わってきます。

もし後から相続財産が判明した場合にも影響します。
・相続放棄→無関係(承継しない)
・相続分放棄証明書→記載の仕方によるが承継しない
・遺産分割協議書→「後日判明した相続財産は、相続人全員で協議する」となっていた場合、協議者の一人となる。

以上、相続放棄と相続分の放棄の違いについてでした。


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